2008年03月04日

「ぐらぐら店長、空港へ行く」⑥

第六話「準備」

いよいよご対面だ。

たかだか2万円もしない電動ガンに偉い手間が掛かってしまった。
だが、人生何事も経験だ。これはこれで楽しくもある。

東山(仮名)さんの後に従い、先ほどの事務所の横の会議室と思しき部屋へ行くと、
長机の上にそれはあった。輸送用のダンボールが開梱され側面だけを覗かせている。

会議室には警察官を含め4人もの男たちが居た。
俺と東山(仮名)さんを入れれば総勢6人。
一体今から何が始まるんだ?

「え~と、---------------って言うのかな?
商品と数は合ってる?」
東山(仮名)さんがインボイスを見ながら確認してくる。
俺は、早く中身を見たくて気もそぞろにこたえる。
「ハイ、間違い有りません。」
まるで罪状認否だ。

「それじゃあ、準備してもらえますか?」
と言いながら、東山さんがその銃を机の上に出す。
「はい、じゃあまずバッテリー入れますね。」

銃を手に取るとまずその重さに驚かされた。
あまり時間は無いので、外観だけさっと見ると、
とてもマルイの電動ガンより安いとは思えない。
スチールプレスの本体に安そうな塗装と相まって、
やる気にさせてくれる雰囲気を醸し出している。
本当は必要ないのだが、ハンドルを動かしボルトをホールドオープン。
ポートから覗くメカボックスは黒染め(メッキ?)だが、シリンダーが真鍮丸出しなので、
多少興が殺がれる。が、全体的には悪くない。

やっと本題。バッテリーを入れようとハンドガード上部のカバーを開ける。
ここも造りは甘い気がするが、ガスピストンが再現されている。良い仕事をする。
そんなことを考えつつ、コネクターを引き出すと愕然とした。
しまった。バッテリーが着かない。
この銃は元々ラージ使用だったのだが、迂闊な事にその時はミニバッテリーしか持っていなかった。
付属のバッテリーを試しに繋いでみたのだが、やはり動くはずも無いので、
情けない気分満点で、持参したバッテリーのコードをEMTシザースで切断し、
「すいませんが、テープ有りますか?」
と言うと
「いや~流石に慣れてるね~。」
こんな馬鹿げた事は初めてやったので泣きたくなった。

本体のコネクターに裸のコードを突っ込み、セロテープで固定。
トリガーを引く。
ポシュポポポ・・・
カタンカタカタカタカタ・・・
空気の吐き出される音に混じり何かの作動音が聞こえる。

「それ、何か動いてるけど、いいの?」
東山(仮名)さんに指摘され初めて気が付いたのだが、
ボルトが動いている。
自分で注文しておきながら、本当にこの時、手に取り動かすまで
知らなかったのだ。
『こ、こいつ、動くぞ・・・!』
心の中では目いっぱい動揺していたが、
「ええ、そういうもんです。」
平静を装い知った振りしておいた。
本当に今日は驚きで一杯だ。人生って素晴らしい。

銃の準備が整うと、一応クローニーを用意しようか確認する。
「実銃も測れるんだから、それで良いでしょ。」
と、東山(仮名)さんが言う。
すると、
「えっ、実銃持ってるんですか?!」
警察の担当者。
「いえ、持ってません。」
先ほどの東山(仮名)さんと同じやり取りをする。
どうも、短絡的な考えをする人間が揃っているのか、
余程この趣味が理解されていないのだろう。

電話で聞いていた警察の弾速計は余程粗悪な物かと思ったのだが、
実際にはクロノスコープだった。
「どうしますか?」
と警察に聞くと、
「せっかく持ってきたんですから、それ使いましょうか。」
・・・善人ぞろいである。
後ろめたい事をやっている訳ではないのだが、
『両方やって見ましょうか。』
位は言った方が良いんじゃないだろうか?

準備が整い、クローニーの特性は
既に東山(仮名)さんには教えていたので、
屋外に計測に行く事になった。

つづく




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Posted by ぐらてん  at 17:02 │Comments(0)ぐらぐら店長、空港へ行く

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