2008年03月04日

「ぐらぐら店長、空港へ行く。」⑦

最終話「計測、そして・・・」

エレベーターへと入っていく6人の男。
そのうちの一人は、アサルトライフルを携えている。
まるで要人の護衛のようにライフルを携えた男が、
最後にエレベーターに乗り込むと、
エレベーターは静かに階下へと降下をはじめた。

この異様な一団はもちろん、
俺含め税関職員・警察官の混成団である。
剥き身のライフルを持って税関建物内をゾロゾロと歩いてく。

守衛室の前を通ると、
「大変だねぇ~。」
守衛が声をかけてくる。
俺は何ともいえず、ニヤリとだけして正面玄関を出た。

当然裏の駐車場へ行くのだろうと思っていると、
「じゃあ、ここでやりましょうか。」
ここ?
此処は玄関から数歩の階段を下りた歩道ですよ?
「あっちの空き地のほう向けて、撃ってみて下さい。」
あっち?
確かに道路を挟んだ向かいは空き地である。
多分、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたんだろう。
「あ、空き地の向こうまで飛んじゃいますかね?」
目測で空き地の向こうまでは40m位はあるだろう、
俺の突っ込みたい所は其処ではない。

我々エアガンを趣味にする者は、カスタムをしては
週末車で何十分も掛かる山や川原、
なるべく人目を避けるように、陰日なたで試射等努力しているのだが、
やはり認識にかなりの誤差があるようだ。
『道路越しに空き地めがけて撃ってます。』
などと掲示板・ブログなどに書こう物なら、炎上必至だろう。

だが、ここでマニアの倫理観を講釈した所で何のメリットも無いだろうし、
お上公認で数発撃つだけだと思い。
曖昧な笑顔を浮かべたまま
「いや~、大丈夫だと思いますよ・・・。」
なんとも煮え切らない事を口にした。

クローニーの設置も終わり、さぁいよいよ計測開始だ。

弾速計から、意識的に50cmほど銃口を離し、
センサーの上を弾が通過するようにライフルを構える。

緊張の一瞬だ。

神に祈るような気持ちで、セイフティを外し、
トリガーを引き絞る。

パシュ。

弾が見えなかった。終わったか・・・。
他の人たちも見えなかったようなだ。
「空き地の向こうまで飛んじゃったかな?」
等と誰かがしゃべっている。
だが、クローニーを確認すると表示はスタンバイ状態のまま変化が無かった。

不思議に思い、
「もう一回撃ちますね。」
そう宣言し、再度引き金を引く、

ポシュ・・・カチン

カチン?
もう一度。

ポシュ・・・カチン

周りの職員・警官・俺、みんなが理解した。
なんと、発射された弾はクローニーの中に入っている。
銃口から飛び出た弾は、一つ目のセンサーをやっとの事で飛び越し、
二つめのセンサーを飛び越す前に力尽き、クローニーの中に着地しているのだった。


何とも言えない微妙な空気が辺りを支配している。
俺は言葉も出ず、自嘲気味に口角を吊り上げ情けない顔を
していた事だろう。
周りの職員たちからは、同情的な気配が感じ取れる。

東山(仮名)さんが口を開く、
「これってこんなもんなの?」
「さぁ、私も初めての銃ですから、何ともいえませんが、
中国製の2次コピーみたいなもんですから、有り得ないともいえません。」
撃った自分で理解できていない、混乱しつつもまっとう?に聞こえる事を言ってみる。
「他の2丁も持ってくるか。」
といって東山(仮名)さんは建物の中へ入っていった。

実は同じ銃が3丁有り、
俺は最悪1丁でも通関してくれればと思い、全て計測したかったのだが、
東山(仮名)さんが一丁測れば良いだろうと、他の2丁は会議室に置いてきていた。

結果的に3丁とも測る事になったのだが、素直には喜べなかった。

東山(仮名)さんが来るのを待つ間、
警札官に住所や電話番号を聞かれているときに、
初めから気になっていた疑問を聞いてみることにした。
「いつもこんなに大仰(官側5人)なんですか?」
若い警官は少し笑顔を作ると
「いえ、初めてですから」
と言う。
実際は税関担当職員、輸入者、警官一人
で良いそうだ。つまり今居る3人は見学者。簡単に言えば野次馬なのだろう。
なんと、今までにこの税関では、
ガスガンで直接引き取りに来た者は居るが、
電動ガンで計測までしに来て引き取りに来た者は俺が初めてなのだそうだ。

何とも珍妙な初の男になったものだなどと考えていると、
建物の中から、
「これ本当にいいの~?」
と訳の分らない事を良いながら東山(仮名)さんが出てくる。
手にした銃を見るとすぐに理解できた。
1丁のハンドガードがあらぬ方を向いてブラブラしている。

「これ箱から出したときから、こんなだけど、大丈夫かね。」
もう、笑うしかなく
「まぁ、それが中華クオリティですから。」
などと分かる人にしか分らない事を口走る。

もう本当にどうでも良くなってきたが、
それでも2丁ともバッテリーを繋げ、クローニー目掛けて発射する。

2丁ともはじめの銃と同じだった、
引き攣った笑いを顔に貼り付けた俺に東山(仮名)さんが声をかける。
明らかに声には同情の響きがある。
「これ、どうする?送り返そうか?」
やはり、根はいい人なのだろう。
「いえ、飾り位にはなりますから持って帰ります。
同情するなら関税負けてください。」
物のついでに言っておいた。

建物に戻り、通関手続きと郵便局の手続きがあるというので、
待合室で待っていると、何枚かの書類を手に東山(仮名)さんが入ってきた。
そして、その書類に記入し手渡すと東山(仮名)さんは部屋を出て行く。

少しすると、また東山(仮名)さんが待合室の入ってきて
「いま、郵便局のほうの手続きしてるんでもう少し待っててね。」
耳には煙草を挟んでいる。この人は終始くだけた話し方をする。

その時は煙草を吸いたい気分ではなかったので、待合室で
最近のエアガン関係の輸入状況の話などをしていると、
入り口が開き、台車に載せられたダンボールと郵便局員が
入って来る。
郵便局員に住所確認のため免許証を渡し、関税の支払いをしようと
請求書を見ると、電話で聞いたときよりも安い金額が書かれていた。

荷物の台車と俺を残し、部屋を出て行こうとする東山(仮名)さんに一つの質問をした。
「実は一月の末にも電話だけでしたがお世話になったんですが、
覚えてらっしゃいますか?」
東山(仮名)さんは、
「覚えてますよ。」
と、ニコリと笑い、軽く片手を挙げて答え部屋を出て行った。

俺は、東山(仮名)さんの出て行ったドアを見ながら
『今後とも宜しくお願いします。』
一人呟くと、
台車を押し部屋を後にした。


おわり






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Posted by ぐらてん  at 22:08 │Comments(2)ぐらぐら店長、空港へ行く

この記事へのコメント
「飛距離<クローニー」
・・・・その場に於いてはそれは喜ばしい事なんでしょうけど、驚愕の検品体制ですよね。
しかし、ほんの少しでも気を遣って組み立てる事が出来るようになれば、中国製品の潜在的な力は恐ろしいと感じました。
税関職員もいい人に恵まれて良かったですね。
 
このシリーズも終わって、明日から何を楽しみに生きていけばいいんでしょうか・・・・。
Posted by パカ山 at 2008年03月05日 18:03
え~本当にいい人でした。
税関職員なんて、
頭ガチガチのお役人かと思っていたので、
今後ともいいお付き合いができれば良いなと思います。

驚愕の検品体制>>
まぁこれは、後日談的にいろいろあるんですが、
あまり公にはしたくないことですので、
今度会った時にでも聞いてください。

このシリーズ~>>
有るじゃないですか、いろいろ楽しみがww
A誌とか、A誌とか、A誌と・・・・
Posted by ぐらてん at 2008年03月05日 18:13
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