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Posted by ミリタリーブログ  at 

2008年03月03日

「ぐらぐら店長、空港へ行く」⑤

第伍話「税関事務所」

エレベーターから降り、しばし立ち止まる。
暗い。
一階もそうだったのだが、通路の照明が全て落とされている。
省エネのためだろうが、今からの事を何か暗示するようで非常に嫌な気分にさせられる。

もう一つ、イメージとの余りのギャップに思考が追い着かないのだ。

税関と言うのは、いくつかの窓口、事務的に仕事を片付けていく係官、
延々と押し問答を続ける面倒な客。
つまり役所そのものと言った物を想像していたのだが、無い。
そんなイメージしていた物が一切無いのである。
人の気配も窓口も明るさも。
今この建物の中には自分独りなんじゃないのか?
ほんの数瞬だが、そんな錯覚に捕われていた。

2階に上がる際に守衛は、
「エレベーター出て、目の前が事務所ですので。」
と言っていた。
確かに、数歩進んだ所にガラスのドアが有る。
だが、看板も案内表示もない。左手に通路があるのも見えたので
覗いてみたが、両脇にいくつかのドアが見えるだけだった。

人に遭うまで少しぶらついて見ようかとも思わないでもなかったが、
もし誰かに見つかり咎められるのも恥ずかしいし、
守衛の言う事は当然正しいので、正面のドアを躊躇いながらも開ける事にした。

ドアを開けると、まるで普通の会社のように机が整然と並んでいる。
だが、まだ皆昼休みから帰ってきて無いようで、若い職員が一人居るだけだった。
少し早く来すぎたかとは思ったが、5分前行動は常識であろうから
その職員に声をかける。
「すいません、一時に約束したぐらてんですが、
東山(仮名)さんいらっしゃいますか?」
「あーハイ少し待ってよ。」
と、言うと部屋の奥の方に呼びに行く、、
入り口からは見えない奥の方には、何人かの職員が居るらしかった。

すぐに初老の職員を伴って戻ってくる、
「どうも、東山(仮名)です。」
今日はとことん予想を裏切られる日だと思った。
なんどか電話では話をしていて、
勝手にYシャツにネクタイ、眼鏡に七三と想像していたのだが、
出てきた職員は、作業服に丸刈りの人の良さそうな男だった。

「まだ警察の人が来てないから、こっちで待ってて貰えるかね?」
事務所から出て行くので付いて行くと、
待合室に案内されたが、どうせ少しの猶予が出来たのだから、
「すいません、喫煙所はありますか?」
と、最後の一服?を希望した。

喫煙所に案内し直して貰うと、
東山(仮名)さんも其処に残った。
午後一に予定を組んで貰っていたので、警察が来るまでは彼も暇なのだろう。
喫煙者には肩身の狭い世の中になったものである。

狭苦しい部屋の中で、煙草に火を点けると、
俺の荷物のほうを見ながら、話し掛けてきた。
「その三脚が付いたのは何かね?」
物珍しそうな目つきで、緑の箱を見ている。
「これは弾速計ですよ。
実銃にも対応してるんで、これならどんな数値が出ても信用できます。」
自前で持ってきてといった割には、クローニーは見たことが無いようだ。
「へ~、実銃持ってるの?それ幾ら位するの?」
「いえw、持ってません。ネットで買えば15~6kだと思います。」
実銃を持っていればこの御時世に、こんなわざわざ警察に目をつけられるような事をする訳が無いのである。
「けっこうするもんだね~。
税関にも一つ欲しいんだけど、上が出してくれないだろうな~。」
税関に有れば、こちらも手間が減るのだが・・・
そんな話をしていると、一人の職員が入ってきた
「警察の方がお見えになりました。」

いよいよご対面だ。

つづく
  


Posted by ぐらてん  at 19:57Comments(4)ぐらぐら店長、空港へ行く